スパイスと香り

20 May, 2020

スパイスと香り

あたたみのある、官能的、ミステリアス、エキゾチック…スパイシーな香りを表現するときに使われる表現は多くありますが、言葉では表きれないその独特の魅力は、私たちを惹きつけてやみません。

その刺激的で複雑な香りは、隠し味的な存在としてフローラル系など、違う種類の香りを引き立てることもできます、料理にスパイスは欠かせないなど、香料以外の日常の場でも、私たちはスパイスの持つ力に魅了されています。

人々は何千年もの間、料理、医療、スピリチュアルな儀式、貿易、そして香料を通してスパイスに親しんできました。これは、古来より、スパイスが人類の本能的な何かを刺激し、調和する力を持っていると評価されていたからに他なりません。 紀元前1000年頃には、インド、中国、韓国では、医療行為に既にスパイスが使われていたことが発見されており、他にも保存料として使用されたり、時には宗教的、魔術的な行為にも使われていました。 さらに時代が進むと、中世において香辛料貿易は隆盛を極め、ヨーロッパでは貴重で高価な輸入品として重宝されることになります。

ブラックペッパー、シナモン、ジンジャー、クローブ、サフラン、コリアンダー、カルダモンなどの料理に使用されるスパイスの多くは、香料でも使われています。 スパイスは樹皮、根、種子、果実が由来のものが多く、花、葉、幹の部分から取れるものはハーブと呼ばれます。 同じスパイスでも、抽出法の違いによってエッセンシャルオイルやアブソリュートといった複数種類の香料を作ることができ、それぞれが香水の材料に使用されています。 

ブラックペッパーは中世の時代では富の象徴でしたが、今では最もよく使われる人気のスパイスになりました。 香料の中でもその人気は同じで、効能としては冷却効果があり、印象としてはシャープでありながらも温かみを感じさせ、まさにピリリと胡椒の効いた、というような言葉がぴったりの香りです。 ブラックペッパーのオイルは、胡椒の木の熟した実をとり、乾燥させ、実を潰し、蒸留をして抽出されます。 ブラックペッパーは古代ギリシャや、中国の漢方薬、古代エジプトのミイラを埋葬する際に使用されたりと、精神や心に刺激を与えるものとして、多くの文化で何千年もの間に渡って活用され続けてきました。 

シナモンも一般的に広く使われているスパイスです。乾燥させたシナモンの樹皮は、甘味や風味を加える為に料理に頻繁に使用されています。シナモンは樹脂、葉、根、幹全ての部分からオイルが取れますが、場所によって少しずつ違う香りが楽しめるのが特徴で、インド、スリランカ、マダガスカルといった砂地が主な生産地です。 シナモンの力強い香りは、料理でも香料でも、ほんの少し加えるだけで大きな効果を発揮します。 

コリアンダーシードは、甘く、あたたかく、スパイシーな香りが特徴のスパイスです。 人気のハーブであるコリアンダーの種を乾燥させたもので、インド、メキシコ、カリブ海、アジア等で、スープやカレー、飲み物の味付けに使われており、フランスでは修道士によって作られる薬草酒であるシャルトリューズでも使われています。 コリアンダーシードはツタンカーメンの墓からも発見されており、古代から重用されていたことがわかります。エッセンシャルオイルやアロマとしてのコリアンダーシードは、Air AromaのブレンドであるFig EssenceやHugo Bossのオリジナルアロマのように、全体に甘い雰囲気を漂わせることができる香りが特徴です。 

スパイスは人の味覚や嗅覚を刺激し、私たちに、人類の持つ本能や古代からの結びつきを呼び起こしてくれます。長い時間をかけて人類が蓄積してきた知識や知恵があるからこそ、私たちは、今も変わらず、スパイスの恵みを日々受け取ることができるのです。